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最高裁判所第三小法廷 昭和60年(あ)1263号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人筒井健の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、原判決が犯罪事実として認定しない事実について没収、追徴の裁判をしたものではないから、所論は前提を欠き、その余は、単なる法令違反の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

なお、原判決は、罪となるべき事実として、被告人が賭博遊技機を設置した遊技場の所在地、右遊技場の営業継続期間、遊技機の種類・台数、賭博の態様を摘示したうえ、被告人が、「中山和民と共謀のうえ、右期間中、常習として、鈴木正美ほか不特定多数の賭客を相手とし、多数回にわたり、右遊技機を使用して賭博をした」旨判示している。このように、多数の賭博遊技機を設置した遊技場を経営する者が、不特定多数の遊技客との賭博を反覆継続した場合につき、右遊技場の営業継続期間の全般にわたって行われた各賭博行為を包括した一個の常習賭博罪と認定する際は、右の程度の判示で常習賭博罪の罪となるべき事実の具体的摘示として欠けるところはない。

よって、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 伊藤正己 裁判官 安岡滿彦 裁判官 長島 敦 裁判官 坂上寿夫)

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